2012年12月08日

十八代目中村勘三郎に寄せて

十八代目中村勘三郎に寄せて

この画像は、2010年に劇場公開されたドキュメンタリー映画「わが心の歌舞伎座」のパンフレットに掲載されていた、十八代目中村勘三郎の姿である。

老朽化による建替えが決まり、2010年4月に閉場するまでの歌舞伎座さよなら公演の舞台裏や、その舞台を飾った当代の歌舞伎俳優のインタビューなどで構成され、勿論勘三郎も看板俳優として出演している。

そして、来年4月にリニューアルオープンする新歌舞伎座の正面には、間違いなく彼の名前が書かれた「まねき」が上がると、誰もが信じていた。
ところが・・・12月5日午前2時33分、無念にもその願いは届くことなく、十八代目中村勘三郎は天国へと旅立ったのである。

「親の死に目に遭えるような役者はろくなもんじゃない」先代の十七代目が当代に言い聞かせていたように、歌舞伎の本公演は、まず昼夜2回の公演があり、ほぼ朝から晩まで舞台がある。
それが約一ヶ月間休み無く行われ、日本中のどこかしらで毎月公演が行われるのだから、人気俳優ともなればその忙しさは尋常ではない。
当代も、事実17年前に父である先代が亡くなった時も舞台に上がっていた。

私は縁あって歌舞伎の世界を知り、学生のうちからあちこちの劇場で歌舞伎の舞台を見て来た。
当代勘三郎も、まだ先代が存命で勘九郎と七之助の初舞台のときに親子三代が共演した時は勿論、自身が十八代目を襲名した時、勘九郎が六代目を襲名した時、松本で3回行われた信州まつもと大歌舞伎など、それこそ数えきれないくらいの舞台の思い出がある。

梨園に生まれたときから自然に身に付き、努力でそれを芸の粋まで高め、また次代に渡していかなければならないという役割を果たすため、一心不乱に芝居のことだけを考えてきた人だ。
その芝居に対する情熱と、人としての太陽のようなエネルギーでもって、57年間を全力で走ってきた人だ。

私にとって当代は、メインで見て来た歌舞伎俳優ではないけれど、間違いなく舞台を見て来た回数は多いほうの役者である。
彼の、その迸る芝居への想いを劇場という近しい空間で何十回も共有できたことは代え難い思い出であり、だからこそ、ことさらに新歌舞伎座に出演できないことが悔しい。
お孫さんとの親子三代の共演も、あと数年で実現するはずだったのに、それが叶わないことも悔しい。

しかしながら、当代の歌舞伎にかける情熱や芸道に精進する魂は、勘九郎と七之助のふたりの息子達にしっかりと受け継がれている。
現在も京都四條南座で舞台が続いているが、彼らは休むこと無く舞台に立ち続けているし、勘九郎襲名披露公演での悲しみをこらえた立派な口上は印象的だったし、臨場していた観客はもとより、テレビで見ただけの私の涙をも誘った。
「舞台に穴をあけない」で、劇場に足を運んでくださっているお客様のために誠心誠意勤めあげることこそが、十八代目勘三郎の何よりの供養になることを、彼らはちゃんと心得ているのだ。

一歌舞伎ファンとして、それこそ彼らの成長を舞台で見て来たのだから、これからもその中村屋スピリットを、出来うる限り見届けたいと思っている。

今年の7月18日、奇しくも私の誕生日に、勘三郎は闘病中にもかかわらず、松本での「天日坊」公演でサプライズ出演した。
その松本公演が最後の舞台だったということにも、感慨を覚えるし生涯忘れられないであろう。


粋でやんちゃな江戸っ子、根っからの歌舞伎役者だから、きっと天国での第一声は
「待ってました!」に返す「待っていたとはありがてぇ」(「お祭り」鳶頭の名台詞)ですね。


十八代目中村勘三郎丈の御冥福を心よりお祈り申し上げます。


※長文、しかもいつもと全く文体も違う硬い内容でしたが、最後までお読みくださった皆様に感謝いたします。


十八代目中村勘三郎に寄せて 十八代目中村勘三郎に寄せて

歌舞伎とともに好きなフィギュアスケートも、昨日はグランプリファイナルの女子SPの放送が一時間早く始まったのですが、肝心の真央ちゃんや明子ちゃんの演技は見れなかった。
「さようなら勘三郎さん」(フジテレビ)という追悼番組を見ておりました。

そうして、ようやく心の整理というか・・・記事を書く気持ちになりましたicon13

タマちゃん語録も、また次の記事から復活いたしますので、お楽しみにface02










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Posted by タ・まご at 02:33│Comments(18)つれづれに…
この記事へのコメント
タ・まごさん、おはようございます ♪

 夕べは、真央チャンの、明るく弾けるような、力強い演技と、
 結果を見届けて、早々眠りについてしまいました。(汗)
 そのせいか、スッキリと目覚め。タ・まごさんのコメを見て、
 チョッピリ安心した私です。

 私、勘三郎さんは、NHK大河などで拝見して来ただけですが、
 好きな俳優さんでした。歌舞伎はなかなか機会が無かったから、
 TVの特番などで拝見していました。
 先日の勘九郎さんの襲名披露の、口上拝見し、悲しみをこらえ、
 立派に務められて、感動しながら、両手を握りながら、
 見守る自分がいました。
 二人のお子様を立派に育てられ、お役目を果たされました。
 素晴らしい功績ですね。
 心から、ご冥福をお祈り申し上げます。

 沢山の映像、そして記憶に残されてます。
 いつまでも、御心に、、、、、。

 (*^^*) 
Posted by lilymasakolilymasako at 2012年12月08日 05:21
おはようございます。
勘三郎さんは歌舞伎を知らない私にとっても、魅力的で親しみやすさがあった方でした。
何となく敷居が高そうな、難解そうな印象のある歌舞伎ですがその良さを広めた功労者でもあったと思います。
いつか歌舞伎を、と思っておりましたが、まさかこんなに早く永遠に引退されてしまうとは・・・。

心より、ご冥福をお祈り致します。
Posted by ちろるちろる at 2012年12月08日 06:58
lilyさん、コメントありがとうございます。

ご心配をおかけしましたが、これからはまた無理しない程度にブログも再開して行きたいと思っています^o^

ワタクシ、夕べは真央ちゃんより勘三郎さんをとりました^^;
きっと民放のことだから、今日のフリーの前にもSPの演技を流すだろうと思って〜
男子もSPの結果が出ていますが、今夜のテレビを楽しみにしています。

そして、やっぱり勘三郎さんはみなさんに愛されているんだなぁとつくづく感じますね。
歌舞伎を知らない人でも親しみをもって見ているのですから、その功績は大きいです。

ホントに、心に刻まれる役者さんです。感謝。
Posted by タ・まごタ・まご at 2012年12月08日 09:18
ちろるさん、コメントありがとうございます。

昨晩はご訪問しながらコメできずに失礼いたしましたm(_ _)m
愛嬌のある雰囲気と江戸っ子らしい気っ風の良さ、ホントに親しみやすい方でしたね〜
でも、二人の息子さんもしっかり中村屋魂を受け継いでいるので、是非機会があったら歌舞伎の生の舞台をご覧ください!
演目を選べば、そんなに敷居も高くないですよん☆
Posted by タ・まごタ・まご at 2012年12月08日 09:23
おかえりなさい。

勘三郎さんへの思いが充分に伝わりました。

実は大変失礼ですが「まさかタマちゃんになにかあったんでは??」と
勘ぐってしまいました。

今後ともよろしくです♪
Posted by おやきわだ at 2012年12月08日 09:42
おやきわださん、コメントありがとうございます。

ただいま〜でございますね^^;
実はこのブログをはじめるにはちょっと事情があって・・・
その時はあんまり考えていなかったのですが、もしブログ記事の更新が止まってしまったら「タマちゃんにもしものことがあった」と思われるだろうな〜と(苦笑)

でも、タマちゃんは調子に波はあってもまだまだ生きますよ〜!
ご心配に感謝、今後ともヨロシクです♪
Posted by タ・まごタ・まご at 2012年12月08日 10:04
歌舞伎界の芸能界の事は、全く解らない私ですが・・・

夕まごさんの気持ちはお察しします・・・

それと、色々な意味で・・・お帰りなさい~
Posted by 水彩画家TOKU水彩画家TOKU at 2012年12月08日 10:05
TOKUさん、コメントありがとうございます。

こんな長文を拝読くださり、心を寄せていただきまして感謝でございます。
ワタクシこそ「待っていたとはありがてぇ」と言わなくちゃね^^;
Posted by タ・まごタ・まご at 2012年12月08日 10:10
勘三郎さんの功績は素晴らし物です。
タ・まごさんの歌舞伎への深い思い感じました

人は必ず終わりがあるのだから、託された人の力量で、さらに故人の名声も上がります。
これからの歌舞伎の更なる発展を期待したいですね。
Posted by レオ店長レオ店長 at 2012年12月08日 12:30
勘三郎さんのご冥福をお祈り致します。
歌舞伎界の巨星が1つ消えてしまいましたね?…ちょっと早過ぎます…
タ・まごさんの心痛は計り知れないものとお察しします。

ブログはボチボチといきましょう。
Posted by がんじい at 2012年12月08日 13:23
タ・まごさん「待ってました!」



訃報を聞いた時まず思い浮かんだのが
タ・まごさんでした


歌舞伎は詳しくありませんが
私の中ではいつまでもやんちゃで幼い
CM(かな?)の「勘九郎ちゃん」のイメージが残っています
つい最近のことのようです

先日襲名された勘九郎さんの声が勘三郎さんとそっくり
色々なことが代々受け継がれていくのですね

ご冥福をお祈りいたします
Posted by RANIRANI at 2012年12月08日 19:22
レオ店長さん、コメントありがとうございます。

ホントにね、その時期は違えども人には誰しも平等に死はやって来る。
託された二人の息子さんの努力精進の結果として、勘三郎さんに恥ずかしくない舞台をこれからも見守りたいと思います。
息子さん達世代が伸び盛りなので、これからの歌舞伎界の行く末も楽しみです。
Posted by タ・まごタ・まご at 2012年12月08日 22:42
がんじいさん、コメントありがとうございます。

57歳って・・・あまりにも早すぎましたね。
歌舞伎俳優は死ぬまで現役、50代なんてまだまだこれから!の世界でしたから。
健康な状態を常に保つことは難しいですので、ワタクシも人生下り坂、ボチボチ行きたいと思います。
ご心配とあたたかい励ましに感謝。
Posted by タ・まごタ・まご at 2012年12月08日 22:55
RANIさん、コメントありがとうございます。

それこそ「待っていたとはありがてぇ!」
拙ブログでも歌舞伎好きはバレバレですものね^^;

ワタクシも46年も勘九郎だったので、そのほうに馴染みがありますが・・・勘三郎になっても、彼はやんちゃなまんまで、おおきな子供みたいな一面を持っていました^^

当代の勘九郎、どんどん父親に似てくるんですよ、顔はもっと痩せていて長いけど。
芸も仕草も声も・・・やっぱり子供は親の舞台を見て育つのですね。
Posted by タ・まごタ・まご at 2012年12月08日 23:01
松本公演が最後の舞台になったのですねぇ、、、
その日が、タ・まごさんのお誕生日だったなんて!
そりゃぁもう忘れられない記念公演になってしまったわねぇ^_^

57歳! 早すぎたわねぇ
わたしにもやはり勘九郎の顔、姿が印象に残りますね☆
TVに出演していた歌舞伎役者さんですから
大衆受けというか、わたしのようなシロウトでも知っている親しみはありましたね☆
Posted by うたかた夫人うたかた夫人 at 2012年12月08日 23:58
うたかた夫人さん、コメントありがとうございます。

今年の松本公演、ワタクシも見に行ったんですが・・・残念ながら千秋楽のこの日じゃなかったんです。
でも、サプライズの場にいられませんでしたが、「十八代目勘三郎の最後の舞台は、私の誕生日で松本だったんだよ!」ってことは一生の思い出です。
今でこそ若手俳優もドラマだ、映画だって色々出てますが、或る意味同時に違う仕事を行き来する先鞭をつけた存在でもありましたね♪
Posted by タ・まごタ・まご at 2012年12月09日 01:28
お恥ずかしながら
歌舞伎に疎いあたしにはまだ「勘九郎」さんという
お名前のイメージが強い方でした。
NHK大河で主役を務めたときは
渋い役者さんだなと毎週欠かさず見ておりましたよ。
笑顔の素敵な役者さんでしたよね。
たくさんのみなさんに愛された中村勘三郎は
これからもみなさんの心の中に生き続けていくことでしょうね。

心よりご冥福をお祈りいたします。
Posted by POPOPOPO at 2012年12月10日 19:12
POPOさん、こちらの記事にもコメントありがとうございます。

まぁ、確かに勘九郎の名前でデビューして46年間ですからね〜、その印象は強くて当たり前です。
「元禄繚乱」での大石内蔵助、改めて昨日のアーカイブ映像で見ましたが、歌舞伎でも忠臣蔵はお馴染みなのもありますが、貫禄がありましたね〜^o^
その時に共演された方々もそうですが、共演するとみんなファンになっちゃいますものね。
Posted by タ・まごタ・まご at 2012年12月10日 22:00
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